バート フランク

THE AMERICANS 81 Contact sheets

職人たちの知恵と技術を注ぎ込んだ写真集が誕生しました。

スイスからの移民者の目で、黄金時代のアメリカに生きる人々を撮影したロバート・フランクの名写真集『THE AMERICANS』。『THE AMERICANS 81 Contact sheets』は、その写真集のコンタクトシートをA2に拡大し印刷したもので、ロバート・フランク監修のもとでつくられました。コンタクトシートを越後和紙で包み、加茂の桐箱に収めるという装丁で、博進堂の地元、新潟の素材を採用いたしました。

黒と白が織りなす光のドラマを印刷で表現

写真界の巨匠ロバート・フランクの写真集を印刷することになったのは、博進堂が研究開発を重ねているモノクロ印刷の作品を、グラフィックデザイナーの杉浦康平氏※にご覧いただいたことからでした。
ちょうどその頃、杉浦氏は発行元の邑元舎 元村和彦氏と3作目のロバート・フランクの写真集『THE AMERICANS 81 Contact sheets』を手掛けていて、博進堂のモノクロ印刷の歩みをお伝えしたところ、「モノクロ印刷に力を入れているなら、フランクの写真集のテスト刷りをしてみませんか」と声をかけてくれました。訪問した担当者は嬉々としてその話を持ち帰り、さっそく社内でプロジェクトチームを結成しました。
杉浦氏は過去の作品づくりから“ロバートらしさ”に熟知していて、黒と白が織りなす光のドラマを印刷の中に求めていました。元村氏は品質にシビアで、これまで手掛けた写真集は、ゴミを自ら一つずつスポットして販売するほどの方。我々はお二人の感性、考えから表現手段を探り、コンタクトシートを写真集にする意味を問いながら1年半に渡って幾度となく試作を繰り返しました。
さまざまな用紙、表現方法を試すなか、前へ進むごとに立ちはだかる課題と向き合い、今できる技術力を印刷物の中に込めました。つねにその時できる最高のモノを。博進堂にしかできない表現を。各工程で職人たちが知恵をしぼり、技術を注ぎ込み、そのあくなき挑戦の結晶が写真集となりました。

元村 和彦 氏

1933年佐賀県生まれ。高校卒業後、12年間税務署に勤務した後、東京綜合写真専門学校研究科に入学し石元泰博氏に師事。1971年~72年にかけて、ユージン・スミス『真実こそわが友』展を東京 / 大阪 / 松山で企画。1971年に「邑元舎」を設立し、ロバート・フランクとは『私の手の詩』('72)、『花は...』('87)、『THE AMERICANS 81 Contact sheets』('09)の3冊の写真集を刊行した。2014年没。享年81歳。(右写真)

ロバート・フランク

1924年、スイス生まれの写真家・映像作家。1947年、23歳の時にアメリカに移住。1959年、ありのままの現実のアメリカを撮影した写真集『THE MERICANS』を発表。ウィリアム・クラインの写真集『New York1945.55』とともに現代アメリカ写真のルーツとして高く評価されている。1990年、ワシントンのナショナル・ギャラリー・オブ・アートに全てのネガを寄贈。2009年に同ギャラリーにて回顧展「Looking In:Robert Frank's The Americans」が開催される。

※ 杉浦康平 氏

著名な作家・写真家のブックデザインをはじめ、様々な分野で独創的な手法を切り拓き、半世紀以上に渡って多くのクリエーターに影響を与え続けている。文化庁芸術選奨新人賞、毎日芸術賞、紫綬褒章受章など受賞歴多数。

リプルトーンによるモノクロ印刷

「写真の中の深い黒を出す」というオーダーにより、4種のモノクロ表現からトリプルトーンを選択。コントラストを高め黒をより締めたい時に効果的な骨版(スミ)とスミ版、特色版をつくり、濃度が異なる2種のスミと独自に調整したグレーを刷り重ねました。
最も悩まされたのがグレーのベタ部分のゴミとムラ。インクの粘度やローラーの調整などを行ない、テストが繰り返されました。また、グレーのベタ部分は数値上では規定内であるものの、一枚ずつ見比べると微かに色調が異なります。「人の目で自然に見えるように」というご要望に応えるため、職人が最後まで調整に全神経を注ぎ込みました。
最終校正は81枚すべての刷り物を大会議室に並べ、確認していただきました。わずかな修正後の本刷りでは、約1週間、工場内の昼夜の温度・湿度を一定に保ち、同じ機械の状態を維持したなかで写真集を仕上げ、25項目の品質チェックをクリアしたものだけを送り出しました。

術と感性で応える色調整技術

お預かりしたRGBの画像データは、トリプルトーンで印刷するために、ひとつのデータから3版を起こしました。さらに特色で刷り重ねるダーマトグラフの赤・青・黄色をそれぞれ抜き出して版をつくりました。本作はオリジナルから150%拡大したデータを使用しています。拡大時に生じたボケをシャープにし、無数のピンホールを一つずつ、つぶしました。シートの露光の違いは、一コマずつ調整し、全体のバランスを整えました。分版したデータから仕上がりをイメージし、黒の階調を読み解きながら1%刻みで調整していきました。

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